「エンジニアとデザイナーのコミュニケーションの架け橋に」
~HCD基礎検定合格者インタビューシリーズ 第2回~

HCD基礎検定に合格された土岐海人さんに、受験の動機や勉強方法、今後の取り組みなどについてお話を伺いました。土岐さんは、株式会社ゆめみでお客様向けのサービスやアプリの実装を担当されています。

はじめに、土岐さんの開発者としての職歴や、現在担当されている業務のことなどを教えていただけますか?

23歳の新卒で入社したのですが、大学をいったん出て1年ほどスタートアップで働いていた時期もあり、トータルで2年~3年くらいの開発者歴になっています。普段はAndroidのアプリ開発が主で、iOSのエンジニアやUIデザイナーと一緒にお客様のサービスやアプリの実装を担当しています。

今回、HCD基礎検定を受験されましたが、存在を知ったきっかけから受験しようと思った経緯についてお聞かせください。

HCD基礎検定を知ったきっかけは、社内でデザイナーを中心にHCDの基礎検定を受けられますよと周知された機会があり、そこで初めて知りました。
もともと、デザイナーの領域に漠然と興味があったことが大きく、アプリの開発をするにあたってもデザイナーとコミュニケーションをとる際に、同じことを言いたいのに共通言語のすれ違いを感じることがありました。それぞれの見えている視点みたいなところがちょっとズレてるなとか、モヤモヤとしたところがあったので、デザイナーの考え方のベースとなる言葉だけでも知っておきたいと考えていたところでした。勉強するための事前教材などもあり、実務経験が無くても受験できることを知ったので、ちょうどよそさうだなと思いました。私が受験したときは会社の中で周知があり社内から45人ほど受験しました

デザイナーとのすれ違いを感じられていたとのことですが、具体的にはどのようなところですか?

Androidアプリを作るという観点では、日本だとまずiOSのアプリをデザインして、そこからAndroidのアプリをいい感じに合わせて実装していくという場合があります。そういった時にiOSのデザインの考え方や自然な画面遷移の仕方としてはこうだけども、Androidでは制約上同じようにすることが難しいとか不自然になってしまうとか、OSの違いによるところをAndroidアプリとしてはどうするのかを考える必要があります。デザイナーにUIを一度組んでもらったところで、エンジニアから実装を進める上での問題がないかレビューやヒアリングするタイミングがあります。エンジニアの観点だと細かいところにばかりに目がいってしまって、デザイナー的にはちょっと違うんだよなという反応になってしまうなど、見えている景色や観点が違う部分もあるのかなと感じることがありました。

これまでに、デザインについて勉強したりとか調べたりすることはありましたか?

遊びの範疇ではあったのですが、過去に自分でアプリのデザインをしたり、あとは人間中心デザインとは直接関係ないですけども学生時代に、どういう人にサークルに来てほしいみたいなところから考えて、サークルのポスターをデザインしたりするなど、デザインすることに対しての興味は元々ありました。
その後、実務にあたって表層の部分よりも要件を固める際や、お客様とコミュニケーションをして社内に持ち帰ってデザイナーと揉んで社内での見解をまとめるタイミングで、より上流のところでもっと上手くできるのではないかという思いがあり、人間中心デザインなどは、知っておいたほうがいいのかもしれないというところに繋がっていった経緯があります。

HCD基礎検定は、受験者に対して提供されているテキストや動画がありますが、それ以外も含めて、具体的にこんな勉強をやったというのがあればそれを教えてください。

結構ギリギリで焦っていた記憶があります。試験に向けた勉強をできた期間は実質的には一週間くらいでした。受験者に提供されていた資料映像やテキストを見ながら全体的にさらっていきました。他の本などを読む時間がなかなか取れず、テキスト教材を読みつつ、知らないワードや気になったワードを書き出したり、要点みたいなところをまとめたり、個別でインターネットや元々持っていた本で調べるような勉強をしました。

その後、受験の日を迎え、実際に受験をした感想を教えてください。

試験の問題の中で、結構テキスト教材の内容そのままの表現だったり、似た表現のものもあったりしたので、解いている間は安心していました。試験勉強を通してもともと言葉だけ知っていたところが、一応その中でも人間中心デザインの中でも工程の話とか、どういうキーワードがあるのか、自分の実務で何かするなら何をまずやってみればいいのかを、改めて体系化されたような気がして、試験勉強といいつつも、自分の中で新しく辞書を作っていくような感覚で役立ったなという気がしています。

受験中に安心した感じというのはどんなところでしたか?

問題は4択の選択式でしたが、知らないことがバンバン出てきちゃうのかなとか思っていましたが、意外と出題内容はちゃんと勉強した範囲の中で出ているのだというある意味で安心感という感じがありました。試験に合格したと分かったときも、嬉しい3割、安心7割みたいな感じで思っていました。

会社として多くの方が受験されたそうですが、勉強している間や受験の後で、社内でも話題になっていたことはありましたか?

何か役立った本がありましたか、みたいなコミュニケーションは少しありました。デザイナーの方で次はHCD-Netの認定するスペシャリストで必要な実務経験のところにも挑戦していくみたいな流れもあり、もし自分がデザイナーのチームにいたら、次のステップを見るきっかけにもなったかもしれないと思いました。

今回勉強されて試験にも見事合格されたということで、今回を節目に、今後こういうことをやってみようかなとか、こんな風に活かしていきたいみたいな、何か抱負のように考えていることはありますか?

一旦は言葉を理解した状況かなとも思うので、自分としては、とりあえずデザイナーの真似であったとしても考え方や知識を実務に活かしたり、使ってみたり、使える状態にしていきたいなと思っています。自分自身はデザインはまだまだですが、ゆくゆくは人間中心設計スペシャリストとか、この先の部分にも理解を深めて実務でもやってみて繋げていきたいなとも思っているので、そういった意味ではスタートに立った感じがあるので、やっていくぞというような気持ちはあります。

エンジニアという軸足のまま、これからはデザインの経験も積んでいきたいということでしょうか?

そうですね、社内でのチーム体制としては、エンジニアとデザイナーが分離していることでコミュニケーションのコストがあるので、専門としてはエンジニアではあるけども、サービスを一緒に作る人という意味では、自分のできる領域をちょっと広げていきたいです。お互いに見えている景色が違うのか、エンジニアが気にするところと、デザイナーが気にするところが違っているとは感じています。前提知識のところも、どっちが深く持っているというよりはエンジニアだと実装寄りのことを気にしていて、逆にデザイナーは実装できるかできないかを気にしていると思います。そんな中で、実装のイメージもわく人がデザインをしたら、そこは実装でなんとかできる部分だからデザインを優先しようとか、あとは逆にデザインもわかるエンジニアであれば、そこは自由に決めてもらってもいいですよみたいな、お互いの専門領域、得意としているところに理解が重なってくると、コミュニケーションもしやすくなるのかなと思っています。現状はちょっと距離感があって前提知識のところですれ違いがありますが、自分が懸け橋として、双方のコミュニケーションの間に立てるような人になりたいなと思います。

今回受験をされたHCD基礎検定ですけど、他にもこういう人が受けるといいのではないかと思い浮かぶ職種や、どういうタイプの方に受験を勧めたいですか?

自分がエンジニア出身ですので、エンジニアでデザインに興味があるっていう人にはお勧めしたいと思っています。デザインのプロセスの中のサービスブループリントとかも初めて知ることができました。デザイナーが持ち出してくれる企画で、社内で何かやろうっていう際に、Miroとかホワイトボードツールでパッと絵として用意してくれた時に、この絵って人間中心デザインのこのところのこれ似ているな、と感じたこともありました。UXカーブみたいに、自分の一年を振り返って気持ちの上げ下げみたいなところを振り返る企画をしてくれましたが、そういうツールもあるのかとか、裏側でどこからヒントを得ているのかも知れたりもしました。話が反れましたが、結論としては、エンジニアとしてデザインに結構興味があるとか、デザイナーのことをわかりたいなと思っている人は、すごく良い学びになると思っています。

大変いいお話を伺うことができました。本日はどうもありがとうございました。

自分の中でも振り返る機会になったのでありがとうございました。

(聞き手は、NTTコミュニケーションズの池 久美子さんです)

2024年9月