「人間中心デザイン(HCD)基礎知識体系」をベースとした検定試験制度です。2020年にNPO法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)のHCD専門資格認定センター内WGグループが、HCDに関する基礎知識体系をまとめるとともに、制定した検定試験です。
HCS共創機構が問題のライセンスを受け実施します。
さまざまな領域の関連団体・関係者と連携し、「非専門家、ノンデザイナー」など、多くの人々(ジェネラリスト)に「HCDの基礎知識やマインドセット」を伝え広めるための制度です。
すべての産業領域に役立つ「HCD基礎検定」HCDの活動は、IT産業をはじめ、Webシステム、医療機器、日用品、サービス産業等、あらゆる産業に向けて、継続的に展開されています。
また、HCDは近年HCS(Human Centered Society:人間中心社会)へとスコープが拡大し、経営/事業コンサルティング領域においても「人間中心の社会」を目指すためのアプローチ方法としてHCD領域へ参画し始めています。各専門領域資格の判定項目としてもHCDの考え方やスキルを採用し始めるなど、各業界の多様な領域や課題解決に活用できるHCDへの取組みスピードが速まっています。
このような産業界の動向に対応するべく「HCD基礎検定」は、全産業界のジェネラリスト向けに「HCDの基礎知識とマインドセット(考え方)」の核を一人でも多くの方に伝えるために実施されます。
「HCD基礎検定」は、業界の実情に合わせて対応できるよう標準問題以外にも、その領域を担当する認証団体/企業から業界対応の独自問題も整備されています。
未来を拓くHCD基礎知識とマインドを

少し以前から、Society5.0の時代では、「モノづくり」から「コトづくり」が重要になると言われ、目新しいモノを提供するよりも新たな価値ある体験(コト)を提案し、そのために何をどう作るかを設計することが未来を拓く鍵だと言われてきました。とはいえ、想定する人々(ユーザーや顧客やコミュニティなど)にとって価値ある体験を見つける方法や、その実装に必要な考え方や手法はどこにあるのでしょう。その方法がまさに「人間中心デザイン」です。その主要なプロセスでは、対象となる人々を丁寧に調査して理解し、価値ある体験とその実装に必要な要件を特定し、試作し、評価します。各プロセスでの手法や判断に必要な知識そして思考法も体系化されています。その「人間中心デザイン」の基礎を学び試す場がHCD検®です。産業の領域だけではなく、教育や医療や行政の場でも求められる基礎知識とマインドです。ぜひ、挑戦して未来を拓く実践力を身につけましょう。
一般社団法人人間中心社会共創機構 理事長 伊東 昌子
受験メリット
受験者ご本人
- HCDの基本的な概念/基礎知識/プロセスを体系的に学ぶきっかけになる
- HCDの専門家やUI/UXデザイナーとの協業が円滑になる
- 専門家を目指すためのファーストステップとしても位置づけられる
- 部門横断的な人材に必要な知識/マインドの獲得とコンピタンス醸成のきっかけになる
企業・団体
- 利用者視点での製品・サービス作りを考えられる人材が増える
- デジタル人材教育のカリキュラムやリスキリング教育としての組み込みが可能
- 利用者中心の製品・サービスの実現に積極的な企業/団体としての価値向上につながる
出題方針と出題範囲
出題方針
HCD基礎検定の目的と出題方針
- このHCD基礎検定では、人間中心デザインの理念を理解し、HCD専門家との共通言語・知識・マインドを持つことを目的としています。
- 設計する際に考慮すべき、人間の身体的・認知的などの諸特性・限界を理解していることが必要です。
- 人間中心デザインの各段階における活動で用いる代表的な手法などについて、その専門用を正しく理解していること、また、それらがどのような背景・必要性により生じたのかについて理解し、実務上のポイントを説明できることが必要です。
問題タイプ
- (A)意味:人間中心デザインの専門用語の意味を正しく説明できるかを問う問題
- (B)実務のポイント:人間中心デザインに必要な活動等の留意点を正しく説明できるかを問う問題
- (C)背景や必要性:人間中心デザインに関する代表的な手法等が生まれた背景や必要性を正しく説明できるかを問う問題
出題範囲
HCD基礎検定の出題範囲はこちらです。
なお、出題範囲は社会や技術の動向を踏まえて随時見直すものとし、内容の追加、変更、削除などを行う場合がありますので、あらかじめご承知おきください。
1.理念
1-1 人間中心デザインの理念
- 人間中心デザインの定義
- 【キーワード】利用者視点、共創、新しい価値、問題の設定(発見)、解決策の探求(創造)、繰り返すこと、メソッド(プロセスと手法)、マインドセット(心構え、捉え方)
- 人間中心デザインのコアコンセプト
- 【キーワード】利用者視点、共創、新しい価値、問題の設定(発見)、解決策の探求(創造)、繰り返すこと
- 人間中心デザインのマインドセット
- 【キーワード】相手の立場に立って考えられること、人を思いやること、当事者意識を持つこと
1-2 「デザイン」の概念
- デザインの概念の拡大
- 【キーワード】デザイン
1-3 関連する考え方
- 人間中心設計、ISO9241-210、UXデザイン、デザイン思考、サービスデザイン、 リーンUX、デザイン経営、アジャイル開発、ソーシャルデザイン、利用時品質、カスタマーエクスペリエンス(CX)
- 【キーワード】人間中心設計、ISO9241-210、UXデザイン、デザイン思考、サービスデザイン、 リーンUX、デザイン経営、アジャイル開発、ソーシャルデザイン、利用時品質、カスタマーエクスペリエンス(CX)
2.計画
2-1 人間中心デザインの計画
- 計画、要求定義、具現化、評価、運用
- 【キーワード】計画、要求定義、具現化、評価、運用、プロセスの選定/最適化、予算/チーム編成/納期
2-2 ユーザーの特定
- 1次ユーザー、2次ユーザー、間接ユーザー、ステークホルダー(関係者)の特定
- 【キーワード】ペルソナ、1次ユーザー、2次ユーザー、間接ユーザー、ステークホルダー
2-3 プロセスの選定/最適化
- 人間中心デザイン適用プロセスの最適化
- 【キーワード】(プロセスの)テーラリング、(超上流からの)繰り返し
3.要求定義
3-1 利用状況の把握
- ユーザー調査による現状の把握
- 【キーワード】行動観察、インタビュー、質問紙(アンケート)、定性調査、定量調査
3-2 理想の利用状況の想定
- To-Beの利用状況の想定、理想とする As-isの想定
- 【キーワード】カスタマージャーニーマップ(CJM)、サービスブループリント(SBP)、(構造化)シナリオ、To-be、As-is、 UXカーブ
3-3 潜在/本質的要求の把握
- ユーザーの本質的要求の把握
- 【キーワード】タスク分析、KA法、上位下位関係分析、評価グリッド
3-4 提供価値/要求の定義
- ユーザー要求定義
- 【キーワード】バリュープロポジションキャンバス
3-5 要求のモデル化
- ユーザー要求を構造化/視覚化
- 【キーワード】ビジネスモデルキャンバス
4.具現化
4-1 アイデアの創造
- 発想法
- 【キーワード】ブレーンストーミング、KJ法、参加型デザイン
4-2 アイデアの視覚化
- プロトタイピング
- 【キーワード】ペーパープロトタイピング、ラピッドプロトタイピング
4-3 デザイン原則の適用
- ガイドライン
- 【キーワード】デザイン原則、ユーザーインタフェースガイドライン、運用ガイドライン
4-4 情報構造
- 情報構造のデザイン
- 【キーワード】サービスブループリント作成 、ストーリーボーディング、ワイヤーフレーム
4-5 インタラクションデザイン
- インタラクションのデザイン
- 【キーワード】インタクション
5.評価
5-1 専門家による評価
- 専門家による評価の目的と意味
- 【キーワード】インスペクション法
5-2 利用者による評価
- 利用者による評価の目的と意味
- 【キーワード】ユーザービリティテスト
6.運用
6-1 実利用状況の把握
- 実利用状況を取得することの重要性
- 【キーワード】実利用状況、リリース後、バージョンアップ
7.基本知識
7-1 情報デザイン
- 概念、構造(要素)
- 【キーワード】UXの5要素(戦略、要求、構造、骨格、表層)
7-2 人間の特性
- 人間工学、認知心理学、認知科学、文化人類学
- 【キーワード】人間の特性(身体、認知、心理、生理)、人間社会、認知バイアス
7-3 ユーザビリティ
- 定義、要素、指標
- 【キーワード】ISO9241-11(JISZ8521)、ユーザー、利用状況、効果(有効)、効率、満足、目標
7-4 アクセシビリティ
- 考え方、ハード/ソフト面、規格
- 【キーワード】アクセシビリティ、多様性(ダイバーシティ)
7-5 テクニカルライティング/UXライティング
- 正しく/わかりやすく伝える技術、優れたUX実現のためのライティング
- 【キーワード】テクニカルライティング、取扱説明、メッセージ、ガイダンス、ヘルプ、UXライティング、マイクロコピー、ダークパターン
8.背景
8-1 人間中心デザインの拡がり
- 社会的な背景、行政/自治体等における人間中心デザインの活用事例の紹介
- DX、Society5.0、ソーシャルイノベーション、サーキュラーエコノミー
8-2 HCD専門家との連携
- HCD-Net認定HCD専門家
- 【キーワード】専門家との連携、プロジェクトマネジメント
問題例
問題例1:
ユーザー調査でわかったことを活用して、ユーザーを代表する仮説的な原型を作る方法のことをなんと呼ぶか、次の中から正しいものを選びなさい。(問題タイプA:意味)
①ペルソナ法
②ダイアリー法
③ジャーニーマップ
④ユーザプロファイリング
問題例2:
ユーザビリティ評価を実施する際に留意すべきこととして、最も適切なものを次の中から選びなさい。(問題タイプB:運用)
①すでに確立された手法や過去の資料を参考にする。
②特定の開発メンバーがユーザビリティ評価を行う。
③ユーザビリティ評価の裏付けとなるデータに基づく提案を行う。
④反対意見が出た場合は、デザイナーの方針を優先する。
問題例3:
人間中心デザインでは、リリース後もユーザーの利用状況の情報を収集して、分析、評価する。その理由を次の中から選びなさい。(問題タイプC:背景、必要性など)
①新規ユーザーを獲得するために施策を打つため。
②利用品質上に問題点がないかを確認し、改善するため。
③ソフトウェアの問題や不具合を見つけ出すため。
④ユーザーの購買行動を分析することにより、経営の安定化を図る必要があるため。
HCD検®認定検定とは
人間中心デザイン領域(UXデザイン、デザイン思考、デザイン経営、サービスデザイン等)で、HCS共創機構が認証した団体である認証団体が行う検定試験を指します。
認証団体が行う検定試験では、HCS共創機構の試験システムを用い、HCD基礎検定の問題を一部もしくは全部使用します。
認証団体が行う検定試験では、その団体が属する領域の独自問題を出題することがあります。独自問題は、HCD基礎検定問題作成ガイドラインに基づき、HCS共創機構の監修を受けます。
HCS共創機構では、人間中心デザイン関連領域でのHCD検®認定の基礎知識検定を実施する団体/企業を募集します。詳細が決まり次第、当サイトにてお知らせします。
HCD検認定UX検定™
認証団体第1号のUXインテリジェンス協会(UXIA)が実施する検定試験です。